「琴子」
家族そろっての夕食も終わりかけた頃、真面目な顔でおじさまに呼ばれた。

「はい」
手を止めて、私も姿勢を正す。

おじさまの声にはそうしてしまうほどの空気が漂っていた。

「前にも言ったが、琴子はうちの娘だ。賢介と同じように大切に思っている。昨日は事情があったんだろうから、もう何も言わない。しかし、私と母さんがどれだけ心配していたかわかるか?」

「すみません」
今は謝ることしか出来ない。

「我が家は色んな意味で世間から注目されることも多い。やりにくいこともあるだろう。昨日みたいに外泊すれば、すぐに噂は広まる。不自由だと思うかもしれないが、うちの子になった以上は自分の行動には気をつけなさい」

おじさまの言葉が胸に響いて、私は段々うつむいてしまった。
賢介さんも反論はせずに、黙って聞いていた。

後になって、
『奥様も旦那様も夜遅くまで起きて待っていたしたんですよ』と、喜代さんに聞かされた。

おじさまとおばさまを裏切ってしまったような後悔にどっぷり浸りながら、それでも私は平石家での生活に戻っていった。