理久の髪にそっと触れる。

その瞬間、今までの想いが一気にあふれ出して少し手が震えた。

再会した日。
朝そっと触れた理久の髪。

5年前、毎朝ひどい寝ぐせで、理久の寝ぐせを直すことが麻衣の日課だった。
理久にとって勝負の日は、麻衣が念を込めながらセットしたこともたくさんある。

一緒にお風呂に入って、お互いの髪を洗い合うこともあった。
勝手に麻衣のシャンプーを理久が使って、理久の髪がつやつやになりすぎてお腹を抱えて笑い合ったこともある。

理久の髪が伸びると麻衣がカットすることもあった。
ベランダにブルーシートを敷いてカットしながら理久がずっと歌っていた日を思いだす。