「これからはプロデュース業に専念するんだって。表舞台に出るのはこの野外コンサートが最後らしい。だから世間的にもかなり注目を集めてるし、瀬波さんもかなりシビアに話を進めてるらしい。」
ネットニュースに書かれている内容を稜真が隣で話してくれる。

「光栄なことだよな。最初で最後の野外コンサートなのに、俺たちが関われるんだ。俺たちにとって、この業界で生きていくのには履歴書トップに来るような光栄なことだ。」
話を続ける稜真の言葉が遠く聞こえる。

知らなかった・・・。

麻衣は思いだす。
あの日、自分を抱きしめた時の理久の顔を。
あれは別れが悲しいからだと思ってた。


ねぇ、理久。
あの日、私の手を握り、私を抱きしめて離さなかったのは・・・何かもっと別の想いがあったの・・・?あんなに大好きな歌を・・・どうして・・・?