「驚いただろ?まだ直接本人たちには言ってなかったんですよ。大物アーティストのコンサートに加わることになったと言っただけで、どなたのコンサートかは秘密にしていたんです。」
麻衣が出て行こうとするのと同時に、会議室のドアから社長が登場した。

会議室にいたすべての人の注目が会議室のドアに集まり、麻衣は部屋から出られなくなる。

「うちの瀬波は海外から戻ったばかりでまだ専属のヘアメイクもスタイリストもついていません。今回の野外コンサートが成功すれば、よろしければ専属契約もお願いしたいと考えています。」
すべてがモノクロに染まった景色。
「驚いています。まさか瀬波さんだったとは。よく曲を聴いています。光栄です。」
稜真が挨拶をしてくれている。

麻衣は稜真の声で冷静になる。
この仕事を本当は断りたい。
でも、麻衣と一緒に仕事をしている稜真にとってはチャンスかもしれない。
私的な事情でそのチャンスを壊すことは・・・できないと麻衣は思った。