「麻衣、俺怖かったんだ。」
理久は麻衣の手を握りながら話を続ける。

「俺と一緒に居たら、麻衣が今までのようにはいかないんじゃないかって。嫌なことをされることも、言われることもあると思うんだ。いつだって誰かの目を気にしなきゃならないかもしれない。安全じゃない日常になるかもしれない。」

ただ好きな歌を歌い続けたい。
でもそれだけじゃだめだと思い知ったこの5年。

世間が理久の歌に注目してくれるようになってからは、どこにいてもいろいろな目が理久に向けられる。

どんな些細なことでもネットニュースに取り上げられてしまう。

その中のほとんどは憶測や偽りの物ばかりで、反論したくても、騒ぐことで余計に加熱することも知っている。