「ねえ篠田」
「ん?」

「優良物件が、ここにいます」

最初に固結びをして、輪を作って蝶々にする。
人生で何回繰り返すかすら分からない作業が、思わず止まった。

「俺は篠田のこと好きだよ」
「竜胆の好きは軽い」

んはは、とやっぱり緊張感に欠けた笑い声。
でも私、意外とこれが好き。

「お友達ってこと?」
「篠田が良ければ彼氏にどうぞ」

「私いつか離れることが前提の付き合いはしたくない」
「絶対別れないよ」
「よくいうよ」

私たちはまだ高校生で、これから先の人生の方が長いし、もっと近くに寄ればお互いの嫌なところだって見えて来る。

そうしたら、絶対竜胆は近くから居なくなっちゃう。

こうして飲み物を買って来ることも、隣でご飯を食べることも、多分なくなる。