言わなくても分かることって、やっぱりある。

いいことでも、わるいことでも。

私は竜胆に「甘いものは苦手だ」と言ったことはないし、「努力しているから可愛いんだ」と力説したこともない。

それでも竜胆は、ほんの数回、私が彼の持ってくるジュースに口をつけなかったことで甘味を差し出すのはやめたし、他の人の様に「だって私は可愛い」といってもめくじらを立てない。

それと同じことで、直接言われなくても陰口は耳に入るし、視線は痛い。

「篠田もさ、俺の顔好きでしょ?」

一重のくせにそれを感じさせないくらい大きな目で、ちょっと眠そうなのがまた柔らかくていい。

一応気を遣っているらしく、肌は同年代の男の子よりつるつるで綺麗。

「まあ、ね」
「それとおんなじことだよ」

綺麗なものは大好きだ。悪いことじゃない。

先輩後輩問わず、竜胆は人気があるし、学校で1番顔がいい男は?と聞かれたら彼の名前を挙げる自信がある。

友達が軽い気持ちでSNSに竜胆の顔を載せたら大バズしたのも、まあそれだけの価値があるからだろうと思う。