「私、嫌われてんね〜」
「うーん俺は篠田(しのだ)好きよ」
「たとえば?」
「顔。可愛いじゃん、目でかいし肌綺麗だし白いし鼻高いし」
「知ってる」

ため息混じりに、八つ当たりで、手元の紙パックに穴を開けた。
私のは、カフェオレ。隣に座る竜胆(りんどう)のは、いちごオレ。

数分前、私が1人で弁当を食べる空き教室にするりと潜り込んできた竜胆が「これあげる」と貢いできたものだった。

「そりゃ素材もあるけど、肌に合う化粧品見つけるの頑張ったし」

一年中日焼け止め塗ってるし、自分に似合うメイクだって研究したし、1グラムでも体重が増えるのが嫌で食生活だって気にしている。

それ相応の方努力をしているのだから、自惚れるくらい許されてほしい。

「また?」
「別に」

竜胆のそれは、多分「また女の子に何か言われたの?」で、私のそれは「別に何も」の意。

それだけで伝わるほど、彼は長い間私のそばにいた。