いけません、凪様

 そして近くの空き教室に入る。
 そこで手を離してもらい、どうしたのか尋ねようとすると、凪様に抱きしめられる。


「やめてください!」


 いきなりだったので驚いて、つい凪様を突き飛ばしてしまう。

 主である凪様を突き飛ばすなんて……。
 私はなんてことをしてしまったのだろう。


「申し訳ございませんでした!」

「いや、こっちこそすまなかった。嫌だっただろ」

「いえ、そのようなことは……」


 驚いたけど、嫌じゃなかった。
 それは本心だ。

 だから凪様にそう伝えると、今度は凪様が驚いたような顔をして


「本当に?」

「はい。凪様に嘘はつきません」


「そっか」


 凪様が嬉しそうに顔をほころばせる。
 よくわからないけど、凪様が笑顔になってくれてよかった。

 そう思ったのもつかの間、凪様はまた険しい顔つきになる。


「それにしても、あの子からあんなことをいつからされてるんだ?」

「今回が初めてです」


 これ以上心配をかけないようにそう返す。


「嘘をつくな」

「嘘ではありません」


 けれど、凪様は私の言葉を信じてくれない。