いけません、凪様

 そして、冒頭に戻る。


「馬鹿な真似だと思うだろ? けど、俺は本気だ」


 凪様に壁際まで追い詰められ、真剣な顔つきでそう言われた。

 それに顔が近くて顔を逸らそうとしたら、いわゆる顎クイというものをされて、逸らすこともできない。
 凪様の綺麗な顔が目の前にあって、さすがにこれは恥ずかしい。


「……凪様、早く教室にお戻りにならないと授業が終わってしまいます」


 凪様に恥ずかしがっているのがバレないように、できるだけ冷静を装ってそう言う。
 すると凪様にふふっと笑われる。


「それって照れ隠し? 顔真っ赤だよ?」


 まさか顔が赤くなってるなんて思わなくて、思わず私の顔を固定している凪様の手を払って顔を逸らす。

 すぐに、なんてことをしてしまったのだろうと思って謝ると、凪様は優しく微笑んで


「謝らなくていいよ」

「ですが……」

「俺は美波と恋人になりたいんだ。だから、いきなりは難しいかもしれないけど、主だとかメイドだとか、そんなこと関係なく接してほしい」


 凪様は真剣な顔をしてそう言う。

 きっと普通の女の子なら、こんな風に言われたらきゅんとするのだろう。

 けど、私にこんなこと言われても困る。
 今まで異性として認識したことはないし、主としてしか見たことがない。