いけません、凪様

 これはかなり怒ってる。
 どうしてこんなに怒ってるのかわからない。

 凪様は端正な顔立ちをしているから、普通の人が怒りの表情を浮かべているよりも迫力がある。
 普段は優しい雰囲気をまとっていて、一緒にいて安心できる。主に対してそんなことを思うのは失礼かもしれないけど、今の凪様はとても怖い。

 私が凪様に仕えているメイドじゃなかったら、きっと逃げ出してる。

 そのくらい怖い。


「あの、凪様……?」


 名前を呼ぶと、ため息をつかれる。

 もしかして呆れられた?
 このまま解雇されるとか?
 そんなの嫌。

 なんとか弁明しなきゃと思ったところで、凪様が真剣な表情で私の名前を呼ぶ。


「はい、なんでしょうか?」

「俺に迷惑をかけないようにしないとって、美波が気を遣う必要はない」

「ですが……」

「それに美波が迷惑だと思っていることは、俺にとっては迷惑じゃない」


 なんて優しい方なんだろう。
 初めて会った時から優しい方だなと思ってたけど、使用人のうちの1人でしかない私にこんなことを言ってくれるなんて。

 こんな素敵な方に仕えていられるなんて、私は幸せ者だ。

 けど、凪様はどうして使用人である私なんかに親切にしてくれるんだろう?
 ふ、と不思議に思って尋ねてみる。


「どうしてって、わかんない?」

「凪様がお優しい方だからですか?」


 そう言うと、凪様が呆れたように話し出す。