小学生の頃、初恋はドラマチックな「何か」がやってきて落ちるものだと思っていた。
 けれど、現実はそんなことはなくて静かな水面に霧雨のような水滴が少しだけ落ちて揺らしてきた。
 その時にはただの胸の痛みだと思っていた「それ」が、だんだんと大きくなっていくのが怖かった。
 そして、私の中の水面に小さな花弁が落ちて大きく揺らしたせいで私の心は傾いでしまって、そのまま花弁を落とした「彼」に囚われてしまう。
 私はあの静かな水面が好きだった。
「何もない」というものがある、あの水面。
 ただあるだけで、安心をさせてくれた。
 けれど、もうその頃に戻ることはできない。
 ざわつく心は、終わりを迎えるまでずっとそのままだ。
 嫌だと思っていた。

 けれども、不思議だ。
「彼」を思うだけで「これでよかった」と思ってしまうのだから。
 だから私はこの恋を大事にする。
 これからも、この先も。
 例え、終わったとしても。