この辺りは滅多に来ないので、アヤくんについていくしかない。

「この辺り、よく来るの?」

「いや、あまり来ないけど、家の近くだと灯ちゃん職場近いから嫌かと思って」

ああ、なるほど。

「嫌じゃないけど、なんか気を遣ってくれて……」

「気なんて使ってない。お店を選んだのは僕だし……」

先週会ったばっかりで、何も話題なんてないよね。

私なんで今日来たんだっけ。まあ、時間あったし。

「ここだよ、お待たせ」

そこはぱっと見店員が2人、多くて3人であろう小さなお店だった。

テラス席があるナチュラルな雰囲気のお店で、私はいずれ女友達も連れてきたくなるほど気に入った。

「素敵なお店……。こんなところよく知ってるね。来たことあるの?」

「ないよ。灯ちゃんに似合うお店を調べたの」

少し得意げなアヤ君を少し可愛いと思ってしまった。

「いらっしゃいませ」

「二人で予約した帳です」

通されたのは、さっき目に入ったテラス席。

「よかったら……」

私が席についてすぐ、まだ立っていたアヤくんがレモン色のカーディガンを膝にかけてくれた。