結局昼時という事もあってどこの飲食店も混んでいたのでカラオケに入ることにした。
カラオケでも食事は取れるし、個室だから事務所のこととかも話せるから都合は良かった。
一応デビュー前なので、それに関することは守秘義務が設けられていた。
遥香はそういうのを人に言いふらすような人ではないので信用して相談することが出来る。
「で、今度は何?」
カラオケにつき、ドリンクバーでドリンクをとってきて一息つくと遥香が笑いながら聞いてくる。
「ねえ、遥香楽しんでない?私は真剣に悩んでるんですけど。」
「あはは。ごめんごめん。奈生も変わったなあって思ってさ。」
「変わった?私が?」
「うん。強くなった。」
「え?」
「言いたい事ちゃんと言えるようになったね。俊介さんと揉めてるのもちゃんと言いたいこと言えてる証拠でしょ?」
遥香がまた私の頭を撫でる。
私は子供じゃないのにと口には出さずに唇をとんがらせて伝える。
「で、本当に何で今回はもめたの?」
「デビュー曲作り直すって言ったら反対された。」
「それで?」
「俊介は音楽全般何でもできるからさ。私とは違って俊介はプロだし。納得いくものを作れない私の気持ちを分かってほしいなって思っちゃったの。」
コップの中のオレンジジュースを一気に飲み干す。
遥香はそんな私を優しい目で見てくれていた。
「曲、出来ない?」
「出来ない訳では無いの。作れるには作れるんだけど、完成したのを聴き直すとやっぱりなんか違うなあって思って、納得いかなくなる。」
「珍しいね。奈生が曲作りで悩むの。やっぱりデビュー曲ってなると違う?」
確かに今まで曲作りで悩んだ事は無かった。
今までは思った事とかを素直に曲にすることが出来ていた。