すごく、好きだった。
どうしようもないくらい好きだった。
「ああ。俺、奈生ちゃんと出会えて本当に良かった。」
夢のような時間だった。
苦しい事だらけだったけれど、大きさは幸せの方が大きかった。
貴重な時間だった。
俺でもこんなにも人を愛せることを知った。
奈生ちゃんが、教えてくれた。
奈生ちゃん。
大好きです。
俺と出会ってくれてありがとう。
それからは忙しい日々を送っていた。
本格的にお父さんの店で働き始めた。
お父さんは以前とは比べ物にならないくらい厳しく俺に指導するようになった。
それは俺を立派な後継ぎにするためだというのが分かっていたからこそ、しっかり話を聞き勉強した。
そしてもう一つ変わったことがある。
それは。
「おはようございまーす!」
坂田がこの店でアルバイトを始めたということ。
単位を3年のうちに殆ど取り終えた坂田はここで働きたいと申し出てくれたのだ。
卒業するまでの約1年間だけという期限付きだが、友人が同じ店で働いてくれるのは嬉しいことだ。
「あ、そうだユウ。これ、教授がユウに渡してって。」
坂田がカバンから分厚い封筒を取り出し、俺に渡す。
俺は受け取るのを拒否するが、無理やり渡される。
「来週までに、だそうです。」
つい最近まで学校を無断で休んでいたこともあって、試験等も勿論参加していなかった。
それで留年になりそうな所だったが、今までの出席状況とかを見て教授が進級させてくれたのだ。
そして、その代わりに大量のレポート提出という課題が出来てしまった。
「なんでこんな分厚いんだよ…1体何枚入ってんだ?」
中を開けるのも嫌になるくらい封筒は分厚く、しかも重かった。