坂田の目に涙が見える。

ずっと心配してくれていたのはスマホに残っている沢山の数のメッセージや着信を見れば分かった。

本当に心配かけたな。

「ごめんな、ずっと連絡返さなくて。」

「ううん。」

「坂田、講義サボる気無い?」

「ある。」

「じゃあ、適当にカラオケでも行く?」

「うん。」

引かれてしまうかもしれないけれど、話を聞いて欲しかった。

全てを無かったことにはしたくなかった。

確かにその事実は存在したのだと、言葉にして証明したかった。

そうすることで、奈生ちゃんという存在を思い出にしたかったんだ。



カラオケに着いてから俺は全てを話した。

誰にも話したくないと思っていた奈生ちゃんとのことを全部話した。

坂田は馬鹿にしたり笑ったりせずに、時々涙を流しながら真剣に聞いてくれた。

「そっか。ユウ、頑張ったね。」

報われたような気がした。

坂田のその言葉で。

「ユウ、幸せだった?奈生ちゃんって子と短い期間だったかもしれないけれど、一緒に居れて幸せだった?」

目を閉じる。

奈生ちゃんの笑顔が蘇る。

鮮明に、残ってる。

「幸せだった。すごく、すごく幸せだった。長い夢を見てるみたいだった。俺、ほんとに、幸せだった。」

涙が溢れた。

何度泣いてもどうやらこの涙は枯れてくれないようだ。

でも、それでいいや。

この涙は奈生ちゃんがくれたものだから。

「ユウ、良かったね。その子と出会えて。」