そして、俊介と会う日には優登さんは行かないでと嘆くようになった。

それをうるさいと言って跳ね除けることが出来たらいいのに、バカな私はそれが出来ない。

「優登さん、私行かなきゃ。」

「やだ。行かないで。」

「必ず帰ってくるから行かせて?」

そんなことの繰り返し。

逃げるように家を出て、急いでタクシーを捕まえる。



「奈生。」

事務所につくと既に俊介は居たようで、片手をあげてこちらに笑顔を向けてくれる。
その笑顔に安心した。

俊介と会うのは2週間ぶりだ。

「俊介、久しぶり。」

「奈生、また痩せた?」

俊介の隣に座ると心配そうに私の頬に俊介が手を当てる。

優登さんと居ると息苦しさを感じて、次第に食欲がなくなっていた。

だから、気付けばみるみる体重は減っていた。

別に拒食症というわけではない。

遥香や俊介といるとその息苦しさは感じず、食欲も戻る。

「そうだ、奈生。」

「ん?」

「お前の正式なデビュー日決まったぞ。」

「ほんと?」

「おお。さっきここのお偉いさんに教えてもらったんだ。」