「それくらい気にしないでよ。俺はここに住まわせて貰ってる身なんだよ?何も言わないよ。」

優登さんの声は弱々しいものだった。

優登さんの目の前に座ると、優登さんが私の手を握った。

握った手から優登さんの震えが伝わってくる。

「また、居なくなっちゃたと思った。」

「え?」

「俺の前からまた居なくなっちゃたと思ったら怖かった。新しく教えてもらった連絡先にいくら連絡しても返事がないし、いっこうに既読すらつかないし。だから、また居なくなっちゃたっておもった。」

優登さんは泣きながらそう吐き出す。

私はそんな優登さんを抱きしめる。

壊れてしまったものを修復するなんてそう簡単では無いことは知っていた。

そしてここまで粉々になってしまっていたら余計に。

私と優登さんは再び体を重ねた。

足りないものを補うように。

この関係の賞味期限はきっとすぐに切れてしまうから、その日が早く来ることを願った。

私たちが自ら終わらせることは出来ないから。

「奈生ちゃん、愛してる。」

その言葉に私は満たされるから。

満たされる度にまた欲しくなってしまうから。

私はまだこの関係をやめられない。

一度狂ってしまった歯車は、直るどころかどんどん拗れていった。



そんな生活から抜け出せないまま1ヶ月が経過していた。

あの日から私と優登さんは毎日のように体を重ねていた。

そして次第に優登さんの私への態度も異常なものになっていった。

仕事に行こうとするだけで優登さんは泣いた。