遥香は泣いてくれた。

私なんかのために泣いて、そして抱きしめてくれた。

正常になれない私を笑ったりバカにしたりせずに、真っ直ぐに受け止めてくれた。

現状は何一つ変わっていないが、心が救われたような気がした。

終電を逃した私はタクシーを遥香に呼んでもらい、家に帰る。

泊まってもいいと遥香は言ってくれたが、着替えも何も用意していないので今日は帰ることにした。

スマホの充電はいつの間にか切れていたようだったが、帰るだけだしそんなに気にはしなかった。

遥香の家を出る時には深夜1時を回っていたから恐らく家に着くのは2時近くだろう。

ボーッとしていると家に着き、タクシー代を払って車を降りる。

優登さんはきっともう寝ただろう。

遅くなること、あらかじめ連絡でも入れておけば良かっただろうか。

悪いことをした気がする。

明日にでも謝ろう。

そう思い、家の中に入ると部屋は真っ暗だった。

やっぱり、優登さんは先に寝たのだろう。

電気をつける。

「きゃっ…。」

リビングの電気をつけると優登さんが座っていた。

「奈生ちゃん、おかえり。」

「優登さん…どうして電気も付けずに…」

「遅かったね。」

優登さんの目が腫れているのに気付く。

もしかして、泣いたのだろうか。

「ごめんなさい。遥香の家に言ってて。」

「何で謝るの?奈生ちゃんが何時に帰ろうが奈生ちゃんの自由じゃん。」

「遅くならないって私言ったから…」