「でも、お互いに夢を追いかけるたびに、どんどん心は離れていって、退屈になって、嘘を平気で言うようになってしまって……。とうとう彼は別れを告げて昨日出て行っちゃったの」

昨日まで一緒にいて、過去に愛した人はもう麗央の横にはいない。麗央は失恋したのだ。とても苦しくて、辛いだろう。碧澄の胸が締め付けられる。

「心が離れ始めた頃から、この人と未来は創っていけないんだって覚悟してた。だから辛くなんてないの。こういう時こそ、笑わなきゃね」

麗央はこぼれ落ちた一筋の涙を拭い、いつものように微笑む。強がっているわけではないと碧澄はすぐにわかった。未来を歩いていくため、麗央は過去を振り返らずに笑っていくことを選んでいるのだ。

「その……僕にできることがあれば、いつでも言ってね……」

失恋したというのに、こんなにも強い麗央に碧澄は尊敬を抱きつつ口を開く。すると、すぐに麗央はニコリと笑って碧澄の手を包んだ。初めて触れた手に碧澄は驚き、胸を驚きと恋心で高鳴らせる。

碧澄の想いは大きくなっていき、恋を叶えるチャンスが訪れた。