碧澄は仕事を毎日コツコツし、無理な付き合いはしないと決めて過ごしていた。自分とは世界が違うであろう人とは仕事以外は関わらない、そう決めていたため、華やかな空気を纏う麗央には近づかずにいた。

それが今日、麗央からキャンディをもらって褒められてしまった。まるでバラの花のような美しさを持った麗央に声をかけられれば、男ならば誰もが恋に落ちるだろう。

碧澄もその一人だった。



それから月日は流れ、碧澄が麗央に片想いを始めて一年が経った。碧澄の恋は進展しているのかと言うとーーー全く進展していない。

朝、碧澄は胸を高鳴らせながら出勤し、自分の働いている部署を目指す。すると、麗央が碧澄の後ろを歩いてくる。碧澄はドキドキしながら振り向き、「雨宮さん、おはよう」と精一杯の笑顔で言う。

「おはよう、時くん」

ふわりとした笑顔で麗央は返す。その笑顔に何人もの男性社員が頬を赤く染めていくのだ。もちろん、碧澄もトマトのように顔を赤くしている。