そう言ったのは、碧澄の同僚である雨宮麗央（あまみやれお）だった。黒いウェーブのかかった髪を揺らし、白いブラウスに青いスカートという他の女性社員と変わりない服装なのに、どこか大人の色気を感じさせる。

碧澄はドキッとしながら「ありがとう」と言った。頬が熱い。体も熱い。そんな中、麗央が碧澄の作っている最中の資料を見るため、少し距離を縮めてくる。座っている碧澄の近くに麗央の豊かな胸が映り、慌てて碧澄は下を向いた。

「時さんって資料作りが上手で羨ましいわ。部長にこの前褒められていたでしょ？本当にすごく見やすくて素敵な資料ね」

麗央が微笑み、碧澄は胸を高鳴らせながら「そんなことないよ」と言う。多くの男性社員の心を奪っている麗央に褒められるなど、前世で自分はどんないいことをしたのだと碧澄は思った。

「資料作り、頑張ってね。お疲れ様」

「ありがとう。お疲れ様」

麗央がタイムカードを押し、オフィスから出て行く。その後ろ姿を、胸を高鳴らせたまま碧澄は見ていた。