「はい……わざわざありがとうございました」
綺麗に舗装された並木道の横に、車が留まる。
窓の外には高層マンションが立ち並び、ライトに照らされてキラキラと高級感が溢れていた。
実際の住まいは、このマンションの向かい側にある、三階建てのボロアパートなのだけど。
(よし、ここは深く聞かれる前にサラリと出ていこう)
まだ社長の手は私の手を握ったままだ。
自分から振りほどくのもためらわれ、私は緊張しながら彼の方を向く。
「では私はこれで。また明日もよろしくおね……」
(ん⁉)
社長の背にある運転席の窓の向こうに、フラフラといったりきたりする美晴の姿が見える。
目からはダラダラと涙がこぼれている始末で……。
(ど、どどどどどうしたの、美晴⁉)
そちらに目が釘付けになっているうちに、握られた手をグッと引かれた。
(えっ……⁉)
「今日リスケした食事会はいつにする? 明日か?」

