「じゃあ、今度こそ本当に終わり。私はこれから会議に入るから、お疲れ様ね。芽衣ちゃん」
「はい。また明日も宜しくおねがいします」
華さんは先程よりももっと華やかな笑顔で私に手を振る。
そんな彼女につられ、私も思わず微笑んだ。
(よかった……華さん普通だし、このまま仲良くなれたらいいな)
自分の席に着いて無になると、また心が一気に重くなった。
(結婚か……まだまだ先のことだと思ってたけど、こんな状況じゃ本気で考えていかなくちゃいけないね。出来たら好きな人としたかったけど……)
私は会議の資料作りを再開するために、そっとキーボードに手を置いた。
「好きな人……」
頭の中にいるのは悔しいけれど『藤堂快』の姿。
必死で考えないようにするけれど、やっぱり彼のにくい笑顔が浮かんできてしまう。
(確かに私は十年間、ずっと社長に憧れてきた。
自分の人生を注いで、この会社に入って、彼の命令に従って……きっと好きな人とは違う。ただの憧れと信じたい)
そう思うけれど、彼の元を離れる想像をすると胸がズキズキと痛くなる。
(この痛みはこの会社への執着からくるもの……? それとも……)

