スマホを切る音が、虚しく部屋に響き渡る。
「そうか……そうだよね。私にできることって、一番は会社のために結婚することか……」
重たい気持ちで独り言を呟いていると、カタンッ! と物音がした。
(えっ……!)
勢いよく顔を上げると、社長室の扉から華さんが勝手に入ってきていた。
「芽衣ちゃん、お電話終わったかしら? さっきの資料で渡し忘れていたのがあって、持ってきたのよ」
「そっ、そうなんですね! ありがとうございます」
にこやかな笑顔で近づいてくる華さんに、心臓がドッ、ドッとイヤな音を立てる。
(もしかして今の会話、聞かれた?)
「あの……華さん、いつからここにいらっしゃったのでしょうか?」
なるべく平静を装って笑顔で訊ねてみると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「なんで? 今来たばかりだけど、ダメだった?」
「いえ……全然です。資料こちらですね」
私に資料を渡す彼女の態度もいたって普通で、本当に聞かれていないように思えた。
(万が一会話を聞かれていたとしても、さすがに結城家具の話だとは思わないよね)

