俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

(こんな時間にどうしたんだろう、まだ夕方なのに……)

キョロキョロと辺りを見渡し、誰もいないのを確認する。
半年ぶりの母親からの電話にただ事じゃない予感がして、私は思い切って『通話ボタン』をタップした。

「……もしもし、どうしたの?」

『芽衣、ごめんね。ちょっと急ぎで……おじいちゃんが怪我をしちゃって』

「え、大丈夫!?」

『それが……』

お母さんの話によると、おじいちゃんがお昼ごろ会社で足を滑らせ、頭を強く床に打ち付けたらしい。
一時的に危ない状況だったようだけど、先ほど無事に意識を取り戻したとのことだった。

(最近足腰が弱ってるってお母さん言ってたもんな……相変わらず無理してるんだ)

この『おじいちゃん』は実家の結城家具の創設者であり、現会長をしている。
御年八十三歳で、今でも社長である私の父親のサポートに当たっている……らしい。

『結城家具』に入社しないと伝え激昂されてから、私はロクに顔を合わせていなかった。
お母さんが時間をかけて説得してくれたおかげで、期間限定の条件付きで他社(CLBKとはナイショ)の入社を許してくれたけれど……。

「おじいちゃんと何を話していいか分からないけど、さすがに心配だからお見舞いに行きたい。
それで、会社の状況は大丈夫なの?」

私が尋ねると、お母さんは深いため息をついた。

『それが正直、全然大丈夫じゃないのよ』