「あの、私も高校生の時はお金がなくて『Berry.By.KAI』のショップに寄って、こんな部屋に住みたいって妄想するのが好きでしたよ」
緊張しながら自身のことを口にすると、社長は少し驚いた顔で私に視線を移す。
「店に行けばパリに住む『素敵な人になった気持ち』になれたんですよね。だから社長には、お金のない頃の私に夢を見せてくれて、大変感謝しておりまして……」
「お前って本当大げさだよな。入社面接の時といい、ハンカチ事件の時といい」
「な……」
本気で伝えたというのに笑われてしまい、無性に恥ずかしくなってくる。
(昨日から距離感が近くなってて忘れてた。藤堂快はイジワルな男だった……)
言ったことを後悔してると、彼は笑いながらチラリと私を見る。
「結城、お前パリに行ったことは?」
「え……」

