思わず勢いよく振り返ると、私と同じレベルで驚く華さんと目が合う。
「本当に言ってるの?」
「違います! 社長が勝手なことを言ってるだけで何もありませんから!
社長、本当にこういった御冗談はやめてください」
「はいはい」
動揺する私を鎮めるようにポンポンと頭を撫で、鍵が開いた社長室に入っていく。
いたってナチュラルな接触に呆気に取られた。
(また普通に触ってきた! 以前よりからかわれ度が確実に増してるよね?)
ついつい社長の背中を見つめていると、突然胸元に資料を突き立てられた。
「!」
「これ、パリの有名家具屋の一覧表。全部にアポイント取って、反応がいいところと接待組んどいてくれる? 日程はパリ視察の初日から三日間で」
冷めた目で淡々と指示してくる華さんに、少しだけ怖気そうになるけれど、私はなんとか笑顔を浮かべた。
「かしこまりました。まとめてくださってありがとうございます」
私がお礼を述べている最中に、彼女は社長室にさっさと消えて行ってしまった。
(はぁ……彼女の怒りに油を注いでしまった……。
やっぱり私が社長としゃべってるからかな? ということは華さんは社長が好きなの?
うう、こんな状況で聞けないよそんなこと!)

