俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

「来たな」

タイミングよくやって来たエレベーターに、社長はさっさと乗り込んでしまう。
緊張で心臓が痛いのを感じながら、私は彼の後に続き隣に立った。
ちなみにこの高層ゆきのエレベーターは利用者が少なく、完全に二人きり。
互いに無言のまま上昇し始める。

(気まずい~。スケジュール確認は部屋に到着してからにしよっと)

そんなことを思っていると、隣からクスッと笑い声が聞こえてきた。

「すっかり真面目秘書に戻ったな」

「え……」

微かに弾んだ声に目を見開いたその時、人影が重なった。

「⁉」

急にいたずらっぽく笑う端正な顔が目の前に迫り、思わず後ずさる。
と、その拍子に背中がエレベーターの壁にぴったりと密着し、背筋がひやりと冷たく痺れた。

「社長? なんでしょうか」

ほんの数十センチ先に社長が立ち、私は囚われたウサギのように完全に追いつめられる。

「ん? 酒をいくら飲んでも赤くならないのに、俺が近くにくると真っ赤になるから面白いなと思って」

そう言っておろしていた私の髪に長い指を通すと、そのまま彼は楽しむようにくるくると毛先を巻き付け始めた。
しかも私の沸騰していく顔を見つめながら、さも楽しそうに……!

「昨日話しててもうお前のことは大体分かった」

「⁉ からかうようなことはやめてくださいませんか。ここ会社ですし、誰かに見られたら」

「仲間と積極的にスキンシップをとることは結束力を高めるから、うちは推奨してるんだが」

「何をおっしゃってるんですか……⁉」

(イケメンだからセクハラにならないだけですよ⁉)

めちゃくちゃな言い分に、思わず声を上げていると……エレベーターがチンッと音を立て、到着を知らせてくれた。

(た、助かった)