「それはよかった。結城は笑ってると可愛いな」
「えっ!?」
この男はサラリと言いのけて、柔らかく笑いかけてくる。
(ハァーッ。藤堂快、やっぱり慣れてるな……!)
案の定動揺していると、社長は突然、自分のワイングラスを持って、チンッと私のグラスに重ねてきた。
「とりあえず、1年間全力でサポートしてくれてありがとな。
これから大きなプロジェクトが始まるから、気を引き締めて頑張っていこう」
「はい……よろしくお願いいたします……」
俯きがちに頷いた私に、藤堂社長はクスクスと笑う。
(完全にこの男のペースに乗せられてる。
とはいえ明日からが本番なんだよね……気を引き締めて、しっかりサポートをしていかなくちゃ)
こうしてほんのわずかな時間、ぎこちないながらも私は彼の要望通り『秘書』の仮面を外し、初めて仕事以外の他愛のない話をしたのだった。

