俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

「ああ、今回のミスは本当になんとも思っていない。もともとお前がアイパッドで作成した段取りを頭に入れといたし……それに、お前が初めてミスするのを見て、ちょっと安心したんだ」

(ん?)

意味が分からず首を傾げる私に、社長は食前酒を口に含みながら視線を送ってくる。

「入社面接のお前と秘書になってからのお前のギャップが激しくて、一体この数年の間に何が起きたんだろうと思ってた。ちょっと抜けた一面が見れて、同一人物だと安心したという意味だな」

「そ、そうですか」

(ずっとそんなこと思ってたんですか?)

まさか社長の口から『あの時』の話題が出るとは思ってもみなくて、びっくりする。

(少しは覚えているとは思っていたけど、意外と鮮明に覚えているんだ。ちょっと嬉しいな)

そんなことを思っていると、藤堂社長はジーッと私を観察し始めた。

「また赤くなった。結城って仕事意外だと緊張しやすいのな、もしかして俺だからか?」

「……っ⁉」