「すみません……ランチのお金、ここに置いていきますので」
笑っている彼女たちを横目に、私はすぐさまお店から飛び出した。
(どうして、おじいちゃんがここに来てるの……⁉)
「めーーーーい! めーーーーーーーい‼」
大柄のおじいちゃんはいつものように和装で下駄を履き、鋭い目を光らせて辺りを見渡している。
エントランスは騒然としていて、私は人ごみをかき分けながら困り果てた受付のお姉さんのところへ走っていった。
と、おじいちゃんと目が合い、すごい形相で睨みつけられる。
「芽衣、本当にここにいるとは……! 何を考えてるんだ、来い‼」
「ちょっと、きゃあっ‼」
片腕を強く引かれ、転びかける。
出口に向かって歩き出したおじいちゃんを割けるように、やじ馬たちはサーッと引いていった。
(私がここで働いてること、なんでバレたの……⁉)
と、正面に見えたエントランスの扉が開き、私のお母さんとお父さんが焦ったような表情でこちらに走ってきた。スーツ姿だ。
「ちょっとお父さん! 本当に乗り込むなんて何を考えてるのよ」
「会長、落ち着いてください!」
「落ち着いていられるか、あんな記事を見て‼」
(あんな記事、って……?)
「芽衣‼」
背後から聞こえてきた大きな声に、はっとする。
おじいちゃんがピタリと足を止めたタイミングで振り返ると、快が息を上げてこちらに走ってきていた。
「待ってください! 代表取締役の藤堂です」
「貴様……」

