頭に浮かぶのは、十年前、ファストフード店で出会った日のこと。
社長の講演会で、私は完全にこの人の虜になってしまった。そう、私の人生はここから動き出したのだ。
テーブルの中央で期待の眼差しに射られ、ごくりと喉を鳴らす。
引かれるかな……なんて不安に思いながら、私は勇気を出して口を開いた。
「実は私が高校生の時……社長と会ったことがあるんです。美晴とフライドポテトを食べてたらあなたに話しかけられて、その後校門まで送ってもらって……社長が母校で講演会した日です。覚えてませんか?」
「何、ちょっと待て」
社長の眉間に皺が寄る。
軽いパニックを起こしたのか、額に手を置いて考え出した。
「……あ、学校サボっていた学生……いたな」
「そ、そうです」
奇跡的に思い出してくれたらしい。
ひとつ思い出し、連なるように彼は詳細を思い出していく。
「マジか。俺にたてついたほうの」
「よく覚えていらっしゃいますね……」
『あなたに何が分かるんですか。私たちのこと』――確かそんなことを社長に言った気がする。
今じゃ絶対に言えないんだけど。
「あの時から、私は社長に憧れてます。だから勉強も頑張りましたし……」

