向かい側に座った社長はウエイトレスさんにお酒を注文し、私に微笑みかける。
「ようやくリベンジできて嬉しいよ。本来であればパリの船で行われる予定だったからな」
「うっ、その節はすみませんでした」
全面的に華さんを信じてしまったあの一件は、今思い出すと社長にただただ申し訳なくなる。
反応をうかがっていると、彼は楽しそうな顔で肘をついた。
「ま、結果的に付き合えたから何も問題はない。
それよりも二人の時は敬語はナシな。あと社長呼びも」
「! そう、ですよね……付き合ってるし」
(なんて呼ぼう⁉ 快さん、快⁉ 藤堂快は絶対ナシでしょ……)
呼び名をうーんと考えあぐねていると、しびれを切らした社長が不機嫌そうな視線を向けてきた。
「そんな難しいことじゃない。好きに呼べ」
「と言われましても、社長はずっと私の憧れの人だったので、そう気軽に呼ぶことはできま……」
そう言いかけたところで、社長がじっと私を見ているのに気づく。
しまった……そう思った時には遅かった。彼は心底嬉しそうににっこりと笑う。
「へぇ、芽衣はずっと俺に憧れを抱いていたとは初耳だな。いつからだ? 詳しく聞かせろ」
「……っ」
(そうなんだよね……ずっと私が思ってただけで、本人に直接言ったことなんてない)

