「どうかされましたか?」
華さんの下で働く、小綺麗な女性が数人。
普段から関わり合いがなく、パリ視察の際も全然話さなかったのに……?
不思議に思っていると、その内のショートカットの女性が優しく微笑む。
「結城さんってかっこいいですよね。フランス語も堪能だし、作っていただいた資料もすごくわかりやすいし、うちの部でちょっとした話題になってるんですよ」
「えっ、そうなんですか……⁉」
思ってもみないところで褒められ、気恥ずかしくなる。
微笑んで誤魔化していると、他の二人も次々に私に話しかけた。
「パリで、藤堂社長の無理難題に淡々と応えてるところを見てやっぱりさすがだなって。私だったら絶対に逃げ出してますよ」
「すみません……いろんな噂とかあって関わらないようにしてたとこあったんですけど、よかったら私たちと仲良くしてほしいです。ご飯とか行きません?」
入社してから長い間、事務課で先輩方にいびられ、秘書になってからは大量の業務に追われ過ごしてきた。正直なところ、楽しそうに会話している他の課の社員たちを見て、心のどこかで羨ましく思っていたのも事実だ。
「あ、ありがとうございます……! 行きましょう、ご飯」
こうして私は、同い年の社員三人と初めて連絡先を交換した。
まさかそんな『いい形』で私が見えているなんて……。
予想していなかったからこそ、驚きとともに嬉しい気持ちがこみ上げる。
(あの時、社長が船から降りて来てくれなかったら、会社も辞めて、こうやって言ってもらえることもなかった)

