俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

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「……という理由で、イブまでに少しでも美しくなっていたいの。
美晴様、ご指南の程宜しくお願いします!」

「分かった! とりあえず家でできる筋トレから始めないと」

久々に再会した美晴は、そう言いながらスマホで私のために色々と検索してくれている。
現在私は彼女の家にお邪魔していて、ラメが入ったファークッションに正座なうだ。
単身者向けのデザイナーズマンションで家具はすべて北欧系で統一。
この空間にいるだけでもオシャレな気分になる。

すると突然、美晴は思い出したようにはっと顔を上げた。

「それでさ、あのライバルの人はどうなったの? 華さんだっけ」
「えっ、と……それがですね……」

私はうつむきながら、パリで聞いた話を説明した。
華さんは私とイエナ橋で別れた後、宣言通りクルージングに乗り込んだらしい。
彼女は偶然を装って船上にいた社長の前に現れたようだけど、彼は華さんが現れて私が来ないのがどうもおかしいと思い、急いで船から出たのだと……。

(華さんウソついてたし、全然社長のこと諦められないんだよね……)

ただ、一度は裏切って離れた関係だ。ここまでくるとかなり強い執着に変わってしまったのかも、と思ってしまう。

「……でね、ここで私たちが付き合うことになったって言ったら、華さんがまた何をするか分からないから、以前よりも気を遣って、みんなの前で社長とは距離を持って接するようにしてるんだ。
だから華さんも、静かだよ。というより前よりも彼へのスキンシップも減ってきてる気がする」

「そっか、なら安心! それにしても大変だねぇ、付き合ってるのになかなかラブラブできないのは」

彼女の鋭い発言に、ドキッと鼓動が跳ねる。

(それが、そうでもないという……)

あのバックハグ事件から数日がたった現在……。

『芽衣、疲れた。パワーチャージさせてくれ』