俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う


藤堂快に実家が傾いていてお見合いの話が出ていることや、退職を考えていることを知ったらどんな反応をされるか考えると、胸が痛くなる。

イヤな顔をされるかもしれないし、逆に悩ませてしまうかもしれない。
それでも、もし社長が私のことを『好き』と言ってくれたら、私は正直に私も好きだと伝えたい。

(好きな人にデートに誘われることが、こんなに嬉しいものなんて知らなかったな)

純粋に好きな人とデートを楽しみ、自分の気持ちを伝えたい。
結果がダメなものだとしても、私の一生に大切な思い出として刻まれるのは間違いない。

(今まで付き合ったこともあるし、キスもしたことがあるけど、
本当に男性を好きになったのは藤堂快ただ一人……こんな自分勝手な感情になったのは初めてだ)

時計を確認すると、十七時四十五分。もうそろそろ船に乗らなければならない。

(社長……もう乗ってるかな)

心を落ち着かせるために、大きく息を吐いたその時……。

「芽衣ちゃん、こんばんは」

はっきりと背後から聞こえてきた華さんの声に、私は大きく目を見開いた。