俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

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「はぁー……めちゃくちゃ緊張してきた」

只今フランス時間、十七時三十分を過ぎたところ。
私が立っている場所は、クルージング乗り場であるイエナ橋。
見上げた先にあるのは、ライトアップされ宝石のように輝くエッフェル塔だ。

(一カ月前の私が、エッフェル塔の前で藤堂快と待ち合わせしてるなんて知ったら、倒れるだろうな)

それに普段の何倍も華やかな服装で……。
正直彼の反応が怖いけれど、今日は私の人生で最も大事な舞台なのだから、思い切って着飾ってみた。

『絶対大丈夫だから、自分の気持ちを誤魔化さずにちゃんと伝えるんだよ!』

(うん、頑張ります……!)

スマホのディスプレイに映し出されているのは、先程届いた美晴からの心強いメッセージ。
何度見返したか分からない。

美晴には、昨日事のいきさつをすべて話した。
今まで、私が藤堂快に弄ばれていると意見を一貫していた彼女だったけれど、
さすがに今回の件は『藤堂快は本気(ガチ)』という判断を下した。

そして私を後押しするように、『この船に乗って、まずは打ち明けてこい』と送り出してくれたのだった。