はっきりと耳に届いたその言葉に、動きを止める。
(やっぱり私は、藤堂快の心の隙間に入ることはできないんだな)
胸が苦しくなってきたその時、大きな手がそっと私の片手を包み込んだ。
突然のことで目を大きく見開いていると、社長が微笑みながら私を覗き込む。
「でも、そう言ってくれて嬉しかった。芽衣は優しいな」
「藤堂社長……」
そう言った社長の声も優しい。
肌に伝わってくる彼の体温にドキドキしながらなんとか頷くと、大きな手はそっと離れていく。
「じゃあ……空気を変えて、俺がいつもやっている人間観察にでも付き合ってもらうかな。
流行を知るにはまず美人を見つけるのが早い。ほら、あそこにいるような」
「……っ」
また通常運転のイジワルな顔で笑っている。
さっきまで身の上話をしてくれていた彼とは、似ても似つかない。
(何かを彼に求めるということはないけど……やっぱり、私はただの秘書でしかない)
社長は目立つ。
圧倒的な美貌に、優雅な所作……女性ならみんな好きになってしまう。
現に彼が視線を送った可愛らしいパリジェンヌたちは、嬉しそうに微笑んでいるし。
(冷静になろう。藤堂快は女好き……。
彼が私にくれるときめきや優しさは、きっと誰にでもしてることなんだ)

