俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う


「じゃあ、社長の美的センスはお父さん譲りなところもあるんですね」

思ったことを口にすると、社長は少し考えるようにして視線をそらした。

「……それ関して全く否定はしないが、俺だけではここまでの会社にするのは到底無理だったな。
当時の仲間……天才的なセンスのある華や遠藤がいたから、ブランドとして成立した」

「!」

社長の口から彼らの名前が出てきて、思わず息を呑む。
彼の横顔は、遠藤さんと再会した時のように憂いを帯びていて、ズキンと胸が痛んだ。

(過去になにがあったか分からないけれど……社長は、傷ついてる……)

私は彼にとって、ただの秘書。
けれど、この一年彼の横にぴったりとついて、誰よりも近い場所にいたのは、今の彼を知っているのは紛れもなく私だ。

それにフランスに来てからは、前よりももっと心の距離が近くなっている。
業務としてではなく、一人の人間として『藤堂快』に寄り添いたいと思ってもいいんじゃないかな……。

「社長……もしよければ、誰にも話さないので私に教えてくれませんか。
社長と遠藤さんの間に起きたこと、話せば少し楽になると思います」

真剣に漆黒の瞳を見つめると、社長はわずかに眉をひそめた。

「なぜ、そんなことを?」

「社長が私をいつも救ってくれるから、私も……社長の力になりたいと思いまして」