社長はそう言って、静かにコーヒーカップを置く。
「父親と母親が交通事故で亡くなってからは、父側の祖父母に育てられたんだ。
教育熱心で、医者やら弁護士になってほしいと常々言っていた。
お前と同じ名門私立校に通わなくてはいけなくなったきっかけだな」
「……確かに、あの学校は教育に関してめちゃくちゃ厳しかったですよね」
自分の紅茶の水面を眺めながら、おじいちゃんの顔を思い浮かべる。
おじいちゃんに会社に貢献できる人材になるようにと、行きたくもない私立高に中学生から入れられ、友達と離れ離れになってしまった苦い気記憶がある。
美晴や、藤堂快と出会うことができ、夢を見出せたから結果オーライだけれど。
「窮屈な生活から出ていきたくて、アメリカに飛んで……フランス旅行で家具を見てる時にピンときた。
父親が割と流行っていたインテリアデザイナーだったから、俺にできないわけがない……これでいこうと」
(えっ……)
「ま、まさかそれだけの理由でインテリア会社を始めようと?」
呆気にとられた私がポツリと呟くと、彼はにっこりとわざとらしく笑う。
「悪いか?」
「いや……そういうわけではないんですけど」
自信家の藤堂快なだけある。
さすがといえばさすがの理由だ。
(って、情報量が多すぎてうっかり流しそうになったけど、社長のお父さんってインテリアデザイナーだったんだ!)

