俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

社長は私にはっきりとそう告げて、こちらに背中をむけしゃがみ込む。
目の前に広がる現実味のないその光景に一瞬は思考が停止するけれど、すぐにハッとした。

「社長にそんなことさせられません! 裸足で帰った方がましです」
「つべこべ言わず早く乗れ。じゃないとお前のフリータイム全消しだぞ」

(うっ……それは絶対にイヤだ)

私を横目で見る彼の瞳は、鋭く光って有無を言わせない威力を持っている。
それに私たちの周りを歩いている地元の人の視線も痛い。

(こればっかりは仕方ないか……社長も私のことを想って言ってくれてるんだし)

ふぅ……と大きく深呼吸し、私は思い切って彼の背中に自分の体を預けた。

「本当に申し訳ありません! この御恩は私の体で返します……あ、もちろん仕事の方でですけど」
「残念だな」

社長は楽しげにそう言って、軽々と私をおんぶした。

(全然よろめいたりしてないんだな、意外に筋肉がついてるから?)

ぴったり体に密着する彼の背筋は厚く、心地いいクッションの上にいるようだ。
ドキドキしている私に反し、社長は堂々とおんぶでシャンゼリゼ大通りを歩き出した。

(ハァーッ、絶対心臓の音、伝わっちゃってるよね……車の騒音で聞こえないといいけど)

なんとか心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返していると、社長は思い出したように『あ』と声を上げた。

「そういえば芽衣、六日目は俺に付き合って欲しい。客室に飾る雑貨を探しに行きたいんだ」