俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

「社長……」

彼は私の前に立つと、フッと小さく笑う。

「なんだか泣きそうな顔してるな、華にいじめられたんだろ」

図星を突かれグッと拳を握ると、長い指がそっと涙がこぼれかけた私の瞳をすくった。

「お前は何も気にせず業務に集中してろ。所詮噂話……そうだろ?」

向けられた優しい笑顔に、罪悪感がこみ上げてくる。

(ダメだ、これ以上黙っとくことはできない)

「あの、社長。私、本当は……!」
「ああ、今は言うな」

そう言うと、社長はグイッと私の顎を引き寄せた。
間近で向けられた瞳が真剣そのもので、鼓動が大きく跳ねる。

「これ以上言うと、本気でキスするぞ。いいのか?」

社長は声を細めてそう言うと、エレベーターホールに向かって視線を送る。
私も横目でそちらを確認すると、華さんが私たちを見ていたようで、ちょうど立ち去るところだった。

「とりあえず、俺が出張から戻ってくるまで静かにしてろ。分かったな」

「は、はい……」

(はい……としか、言いようがないよ)