軽く睨むと、弓木くんがくっくっと喉奥で笑う。
「その顔、全然怖くねーから」
「ええ、渾身の睨みなのに……」
うつむいて、また顔を上げると弓木くんと目が合って。
お互い逸らすタイミングを失って、見つめ合ったまま。
そもそもわたしの体は弓木くんの膝の上に乗ったままで、今さら降ろしてとも言いだすきっかけを見つけられなくて、弓木くんも何も言わなくて。
近すぎる。
でも、もっと近づける一線は超えないぎりぎりのラインを守りながら、ふいに話題がとぎれて沈黙が訪れる。
静かになったリビングに、ざあざあと窓を叩きつける雨音が響いた。
「雨、止まないね」
「あー……雨雲レーダー見てみるか」
わたしを膝に乗せたまま、弓木くんはスマホを取り出して雨雲レーダーを調べ始める。