「……っ」
弓木くんがわずかに動くたびに、ふわっと香る、その香りのせいだ。
わたしからも同じにおいがして、そわそわする。
弓木くんが使っているボディーソープやシャンプーを借りたんだから、それはあたりまえのことなんだけど……なんだか、心がふわふわするの。
「雨、止まねーな」
窓を叩きつける雨粒を見て、弓木くんが言う。
「むしろ、さっきより強くなってるか」
この調子じゃ、今すぐに帰るのはむずかしい。
雨足がせめて弱くなるまで、弓木くんの家で雨宿りさせてもらおう。
「時間かかりそうだし、さっきの勉強の続きでもする?」
「わあ、それ名案!」



