「……や、じゃなきゃ、俺が困るんだよ」
「どういう、こと?」
こてっと首を傾げると、弓木くんは「はー……」と溜め込んでいた息を吐き出す。
吐息が、妙に熱っぽい。
「目のやり場に困ってんの、わかんない?」
「……え」
「自覚してよ。今、こっちは必死に見ないようにしてんだから」
弓木くんにそう言われて、はじめて自分の格好を見下ろした。
貸してくれていたジャージを脱いだ今、上半身はシャツ1枚。
雨に濡れて肌にぴたりと張りついた、シャツは、透けて────。
「ひゃ……っ!?」
「……今さら気づいたの?」
「ご、ごごごごめんね!? お見苦しいものを見せまして!」
色気もへったくれもない下着が透けている。
さっきから弓木くんが極力わたしの方を見ないように、変な顔の角度で喋っていたのはこのせいだったんだ、と今さら理解した。
これでは露出狂だ。重罪だ。
ぼぼぼぼぼ、と首筋から顔に向かって熱が駆け上がってくる。
耐えきれなくて、バクハツしそうになったタイミングで 「お風呂が沸き上がりました」 と湯沸かし器から助け舟。
「お、お風呂行って参ります……っ!!」
しゅたっと逃げ出したわたし。
取り残された弓木くんが、ずるずるその場にしゃがみこんで独りごちていたことなんて、知る由もない。
「……見苦しくないから、困ってんだよ、ばか」



