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SIDE/ 中瀬このか



「や、やばば……」



思わず、声が漏れてしまう。

返されたばかりの小テストを握る手がぎゅっと強ばって、プリントにシワが寄ってしまった。

それは、とある日の数学の時間のこと。



「今返却した小テスト、平均点は37点だ。まずまずの出来だな」



50点満点中、平均点は37点。

そしてわたしの点数は────。


あまりにも信じがたい点数に、ガタガタと体が震えはじめる。背中をつうと伝っていくのは、冷や汗。

そんなわたしの異変にいち早く気づいて、見逃してくれないのは。



「中瀬」

「な、な、なんですか弓木くん、用件は手短に15文字で」

「震えるほど悪い点取ったの」




ぴったり15文字だ。すごい。

なんて感心している場合ではなく……!




「断じて違うよ! これはその、あまりにも高得点で歓喜の震えといいますか、あはは────っちょ、弓木くん、待っ! 見ないで! だめ!!」



作り笑いでごまかそうとしたら、隣の席から弓木くんの腕が伸びてきて、わたしの小テストが一瞬にして盗まれた。


弓木くん、腕長いな。