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「だいぶ暗くなってきたね」

「だな。そろそろ帰るか」



西の空がオレンジに染まっている。

左手にうさぎ、右手に弓木くん、弓木くんの右手にハニワ。



並んだ影が、地面にすうっと伸びる。

わたし、知らなかったな、デートがこんなに楽しいものだって。


帰り道に自己嫌悪に陥らないデートははじめてだ。

むしろ、まだこの時間が終わらなくても……。



「あの……」



“今日はありがとう”

思っていたよりも楽しかったこと、素直に弓木くんに伝えようとした、そのとき。



「あれぇ? このかー?」

「……!」



後ろから、呼び止められる。

聞き覚えのあるその声に、振り向けば。



「っ、ユウジ、くん」



バクン、と心臓が鳴った。


わたしを呼んだそのひとは、ユウジくん。つい昨日までお付き合いしていたひと。

好きだった男の子。……ううん、今も、まだ。



あっさり、簡単に忘れられるわけがない。


たしかにわたしは惚れっぽくて、恋をしては失恋をして、また恋に落ちるけれど────それでも、いつも、真剣に誰かを好きになって、大真面目に恋をしているの。


別れたからといって、すぐに気持ちは消えてくれたりしない。