「いやー、忙しくてこのちゃんのクラス行けなくて残念だったけど、最後に見れてよかったー」

「よかった……?」



「メイド服、いーじゃん。超かわいー」

「お、お世辞はいいよ……!」



「ふは、本気で言ってんだけどー。てか、今日のこのちゃん、まじで一段とかわいー感じだし、千隼も気が気じゃなかっただろーね」

「……?」




きょと、としたわたしに逢見くんが面白がるように目を細めた。

それから、すっと腕が伸びてきて。



「てか、スカートさすがに短くない? ちょっと捲ったら全部見えそ────っ、痛ってえ!」



バシッと容赦ない衝撃音がして、逢見くんが顔を歪める。

それと同時に、バサッと肩になにかをかけられた感触がした。


これ、燕尾服……?




「ったく油断も隙もねーな」


「あーあ、もうちょっとでこのちゃんのスカート触れそうだったのに────った! おい千隼小道具使うのは卑怯だろーがよ!」



いつの間にか背後に現れた千隼くんが、逢見くんが携えていた模造刀で、逢見くんの手を叩き落とす。普通に痛そうでちょっと同情した。



逢見くんから隠すようにしながら、千隼くんはわたしの腕を引いて、歩き始める。





「ど、どこ行くのっ? わたしまだ着替えが────」

「あとでいい。後夜祭の花火、もう始まる」