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はあ〜〜……と息をつく。

チャイムの音が響き渡って、文化祭の1日は無事に幕を閉じた。



わたしたちのクラスの “メイド&執事喫茶” は大盛況────というのも、千隼くんのイケメンぶりが学外のひとたちの間でもうわさになったらしく、一目見たさに女の子たちの大群が押し寄せてきて……。



さすがは千隼くんである。


正直複雑な気持ちではあったけれど、千隼くんは売り上げを損ねない絶妙なバランスの塩対応で捌いていて、ほっとした。



ほっとしたタイミングで、いじわるく口角を上げた千隼くんと目が合って、わたしの考えていることなんて全部お見通しなんだってドキッとしたのも記憶に新しい。



それから、たまに厄介……というか言うことを聞いてくれない男のお客さんも現れたけれど、その人たちに対しては千隼くんがぞっとするような笑みで対応していた。



傍から見ているだけでもけっこう怖かった……し、わたしの言うことはぜんぜん聞いてくれなかったお客さんも千隼くんには絶対服従していて。

千隼くんってもしかして接客の才能があるのかも……?




そんなこんなで慌ただしい1日が終わったわけである。

とっても疲れたけど、楽しかったな。



このあとは後夜祭。

メイド服はもう脱いじゃおうかな、と更衣室に向かっていると。




「あ、このちゃんだー」

「逢見くん?」




ばったりと出くわしたのは逢見くん。


逢見くんのクラスは和装占い(?)なるものをしていたらしく、凛々しい袴姿。